2008年10月29日水曜日

公園奇譚

夜道をテクテクと歩いて公園の入り口にさしかかると、人ごみができていた。
この公園は相当な広さで、一周数キロもある。

こんな夜更けに何事だ?と思って公園内に入っていくと、主婦や子供が大勢いた。
そしてその正面には幅10メートル高さ5メートルはありそうな白い幕が、木々に張られたロープから垂れ下がっている。
近くにいた主婦に聞いてみると、今から野外映画をやるそうだ。
夏休みとはいえ、こんな夜更けにやるものなのか・・・そう思ったが、俺もちょっとだけ見てみることにした。

係員らしき人がいて誘導されていくと、「下」は満員なので「上」で見てくれという。
上を見上げると、地上5メートルほどの位置に巨大な円形「ハンモック」が設置されていた。
この円形ハンモックも巨大な木々にロープを渡し設置されたもので、直径10メートル以上はある。
既に沢山の子供達がその上で座っていた。
俺は靴を脱いでハシゴを登った。
ハンモックはロープを網状に編んだもので、注意しないとすぐに足を取られてしまう。網の目の間に足がすっぽりと入ってしまうのだ。
俺は慎重に歩を進めて、一番後ろ側に腰を下ろした。非常に安定感が乏しい体勢である。ハンモック自体も風で揺れている。

映画が始まった。
どうやら動物ドキュメントのようで、動物、昆虫などの珍しい生態や高倍率の映像が多数映し出されていた。
まぁ、公共の公園でやる映画ならこんなモノだろう。
今、目の前のスクリーンには巨大なタランチュラが映し出されている。蜘蛛というのは目が8個あるそうだ。

そういえば、最近我が家に巨大な蜘蛛が出現した。
後から調べるとアシダカグモという種類で、CDより大きかった。巣を張らずに徘徊する蜘蛛で、産卵時には、卵の入った白い繭のような「卵のう」を孵化するまで持ち歩く。
俺は蜘蛛が嫌いなので、新聞を丸めてそれで蜘蛛を叩いた。蜘蛛はどろっとした液体を出して死んだが、白い”卵のう”を持っていたのでその中からうじゃうじゃと子蜘蛛が出てきた。それは数百匹もの数で、文字通り「蜘蛛の子を散らす」ように出てきた。、あわてて殺虫剤で全て殺した。

それに、庭に巣を張っていた巨大な女郎蜘蛛を見つけ、輪ゴムを飛ばして標的にして遊んだこともあった。
女郎蜘蛛はだんだんと弱っていき、それでも生きていたので数日間遊べた。
そんなことを考えていると映画が終わった。

立ち上がろうとフト下を見ると、あれほどいた観客がだれひとりとしていなくなっていた。
いないはずだ。時計を見ると午前2時を過ぎていた。
こんなに時間がたっていたのか・・・。4時間も映画を見ていたのか?どうも釈然としない。

前を見ると、ハンモックの上の子供たちはまだそのままいる。下にいた親達は、先に帰ったのだろうか?
子供達は映画が終わっているにも関わらず、前のスクリーンを見ていた。ちょっと異様な光景だ。


・・・とその時、子供達が一斉にこちらを振り返った。


子供たちの顔には目が八つあった。
全ての子供の全ての目が俺を見つめていた。


うわぁ~~~ぁ!


俺は大急ぎでハンモックから降りようとしたが、足が網目に入って身動きできなくなった。
子供達がわらわらとよって来た。どの子供も、八つの目で不気味に俺を見つめていた。

八つの目だ!蜘蛛だ!蜘蛛の子だ!このハンモックは蜘蛛の巣だったんだ!

子供たちの後から、巨大な何かが近づいてきた。
子供達をかきわけ現れた姿は、人の2倍はあろうかと思われる体躯と8本の長い手足を持った怪物だった。
体の割りに小さなその顔は人と同じサイズだった。やはり目が八つあった。
子供たちが、身動きできない俺の手足をつかみ、ひっぱりだした。
手足がもげそうに痛んだ。
手の空いている子供達は俺の体のいたるところを噛みだした。
単に噛んでいるだけではない。肉を引き千切っている。

俺は叫んだ。「た、助けてくれ!」

親玉が口を開いた。
自分の頭より大きく開いた。長い牙が2本あった。
そいつは俺の頭をそのまま飲み込んだ。

次の日、某公園内で奇妙な首吊り死体が発見された。
首だけでなく、体中をロープでぐるぐるまきにした死体だった。

=============終わり==============


なんの”ひねり”も”おち”もない物語ですいません。
この話、前半の「八つ目の子供」が出てくるまでは、私の見た『夢』をそのまま文章にしたものです。

夢の中では非常に不気味で不思議な雰囲気でした。
もったいないので、強引に「怪談」にしました。


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