2008年10月19日日曜日

第三十六話   ミカシズ・シリーズ

シズが小声で言った。「ミーシャだわ」
庭に次々に集まる猫達の中にミーシャが現れた。

ミカは驚いた。本当にミーシャが来たのだ。

ミーシャはシズの姿を見つけ近づいて来た。

しかし、両者の間には部屋と縁側を隔てるガラス・サッシがあった。
もし、サッシにロックが掛かっていなかったら、ミーシャは戸をスライドさせることが可能だ。
しかし、ロックは掛かっていた。

シズは、ブツブツとつぶやきはじめた。
ミカが小さな声で言った。「何しているの?」
シズも小声で答えた。「あそこに床下収納があるわ」
ミカが台所の方をみると、確かにそれはあった。
シズは続けた。「ここは相当古い屋敷みたいよ。床下収納も現代の家みたいに、ボックスがあるんじゃなくて、単に床下に通じているだけだと思うの。おばあちゃんの家がそうなってるの」
「だからどうなるの?」
「ミーシャがこの家の床下にもぐれたら、あの床下収納を通ってここまでこれるんじゃないか?と思って、『思い』をミーシャに送ってるの」

シズは何を言い出すのだ!とミカは思った。
「そんなことできるの?」
「たぶん。ミーシャは猫だから言葉や人間の表現で思いを伝えても理解できないの。だから画像で床下を通ってここまで来いって、伝えてるの」

ミカは、それを途方もない考えだと思ったが、ミーシャの利口さはシズから聞いている。
待つより方法がない今、やらないよりはマシだと思った。


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