2008年10月19日日曜日

第三十四話   ミカシズ・シリーズ

シズが小さな声で言った。大きな声だとリサが起きてしまうかも知れないからだ。
「ミカ。ミーシャが餌をねだる時の鳴き声を覚えてる?」
「ん?たぶん、覚えてる」
「あれをながーく伸ばして、最後にアクセントをつけて無音発声で鳴いてみて」
ミカも無音発声部分以外は小さい声で答えた。
「・・・・・・・。こう?」
「もっと、高く。それに、最後の『ん』にアクセントを置いて」
「・・・・・・・。これでいいの?何、これ?」
「猫が仲間を呼ぶ鳴き声よ」
「猫が来るの?」
「ミーシャが来てくれればいいのだけど」
「ミーシャって、今、どこにいるの?」
「わかんない」
「ミーシャが来てどうにかなるの?」
「わかんないけど、もし来れば、ロープを噛み切れるかも」
「なんか可能性薄いわね。でもやらないよりマシか」

ミカは鳴き続けた。
しばらく鳴き続けると高い壁のこちら側にある荒れ放題の雑草がガサガサと鳴った。
高い壁には猫が通れそうな穴でも開いているのだろう。生い茂った雑草の中から猫が顔を出した。
ミカが無音発声で言った「本当に来た!!」
シズが小声で言った。「そうね。でもミーシャじゃないわ」
ミカは再び鳴きはじめた。
やがて猫がわらわらと庭に侵入してきた。
ミカはそれでも鳴き続けた。


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