2008年10月19日日曜日

第二十八話   ミカシズ・シリーズ

受信能力だけを持つ人間がいるのなら、送信能力だけを持つ者もいる。
受信能力を持っていれば、送信能力を持つ人間の思考は筒抜けだ。

もし、送受信両方の十分機能する能力を持っていれば、テレパシーの存在に気が付き、自分の能力を制御訓練することが可能だ。
しかし、送信能力だけを持った場合は、そもそもその能力に自らが気がつかないので、一切制御されず、だだ漏れになる場合が多い。

学校の裏に住むその男もそんな送信能力だけを持つ人間だった。
その男は親から受け継いだ大きな家にひとりで住んでいた。屋敷とも言えるその家は広い敷地と高い壁に囲まれていた。


近くの学校に登校する強力なテレパシー能力を持つ女生徒に思考を読まれているとは、その男は全く知らない。家の予備の鍵をどこに置いているかも知られていたことも知らない。

男はいつものように、朝から出かけた。帰ってくるのは、夜9時をすぎてから。


だから、そのテレパシー能力者が、必要に迫られた時に、その留守の家を利用しようと思っていることなど知る由もなかった。


第二十九話へ

0 件のコメント: