2008年10月19日日曜日

第二十七話   ミカシズ・シリーズ

その日、授業が始まる時間になっても学校の裏庭でたむろしている生徒の集団がいた。
全部で9人。クラスも違えば、学年も違った。

その生徒らは園芸クラブの部室から持ち出したクワや大きなスコップを手にしていた。その顔は無表情でお互い言葉も交わさず、沈黙していた。

各クラスの授業が始まると、彼らは動きだした。

ミカシズのクラスの生徒がザワザワと落ち着きをなくし始めた。
ミカが窓の外を見ると、授業中にもかかわらず、数人の生徒がそこに集まっていた。
その生徒達は、先端が三又に鋭く尖ったクワや、大きなスコップ、ツルハシなどを手に持っていた。

来た!!
ミカはそう思った。思ったより多数で重装備だ。

シズもその光景を見て、震えていた。

こんな大掛かりな集団で襲ってくるって言うの?

他の生徒はその集団の意味が分からず、何だ?何だ?とヒソヒソと話していた。

外にいた生徒が手に持っていたクワで、いきなり窓ガラス叩き割った。
教室内では悲鳴が上がった。
そこからガラスを割った生徒が入って来た。次々に集団は教室に入ってきた。

教室内はパニックになった。
教壇の先生が何か集団に叫んだが、悲鳴でそれは聞こえなかった。
教室の生徒がドアから逃げ出そうとしたが、それより早く教室の前後のドアが開いて、手に金属バットを持った生徒が立ちふさがった。

逃げ場を失った教室の生徒は完全に混乱していた。

窓から侵入してきた生徒達は、机、椅子、床、とにかく手当たり次第に手にした武器で破壊を始めた。
ひとりがシズに近づいた。
シズは恐怖で体が硬直して動けなかった。
ツルハシを持った生徒がシズの正面に立った。
それでもシズは動けなかった。
その生徒はツルハシを振り上げた。
その光景を見たミカは悲鳴を上げた。

シズが殺される!!

パニックとなった教室にひときわ大きいミカの悲鳴が響いた。
その瞬間、ツルハシは振り下ろされた。

ツルハシはシズの顔面をかすめ、机に激突した。机がふたつに破壊され、飛び散った。

それでもシズは硬直したまま。ミカの悲鳴は響いたまま。

教室は混乱の極地だった。

その時、教室の窓ガラスがガタガタと揺れだした。それはあっと言う間に一層激しいものとなった。
やがて教室じたいがカタガタと揺れだした。

混乱はさらに増した。

教室で暴れる生徒。
逃げ惑う生徒の悲鳴。
揺れる教室。

突然、窓ガラスが大きな破裂音を出して次々に割れ出した。

逃げ惑う生徒達は一瞬、静かになった。
暴れる生徒達も、一瞬、動きを止めた。

だが、直ぐに悲鳴は更に大きくなり暴れる生徒も一層激しく暴れだした。

「呪われてるんだ!!」誰かが言った。
「この教室は呪われている!」

今回の騒動は今までのものと桁が違っていた。
人が暴れるだけではない。超常現象まで起こったのだ。

もうなにがなんだか皆分からなかった。

混乱が混乱を呼び、生徒は将棋倒しになり、誰が投げたのか机が飛び交かった。

皆が我に返ると、乱入してきた生徒は姿を消していた。

クラスの生徒がミカとシズの姿も消えているのに気が付くのはもう少し先だった。


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