2008年10月16日木曜日

第十七話「過去2」   ミカシズ・シリーズ

ミカとシズがテレパシー実験をやると言い出した。

お笑いだ。

どんな手品かしらないけれど、安易にテレパシーなどと言ってほしくない。

ミカとシズが背中合わせに少し離れて座り、ミカにテレパシーで送る「単語」を他の生徒が見せている。
ミカはそれらしく精神統一をして見せている。ミカが「えぃ」と言って体を前に曲げる。
するとシズがその「単語」を言い当てた。

「スゲー!」「どーやったんだ」「すごいわ!」「凄いけど手品だろ」
感嘆の声が次々に上がる。

自分達がやるって言ったんだから、できるのは当然でしょう。
何がうれしいんだか・・・。

皆は、「単語」ではあきたらなくなって、問題を「文章」にしだした。
問題を出す人物も一回づつ変わった。
それらのことごとくをシズは言い当てた。

しかし、どんな仕掛けだろう。
こうやって見る限り、第三者の協力はなさそうだ。
「スゲー。本物のテレパシーだ」
「ちがうよ。仕掛けがあるんだよ。テレパシーなんかあるわけない」
「ミカ、シズ。すごいじゃない。テレパスだわ」

テレパシーなもんか。
ミカとシズはテレパシストではない。

他の懐疑派の生徒が「それはテレパシーではない」と言うのと、
私が「それはテレパシーではない」というのは意味が違う。レベルが違う。次元が違う。

私は知っているのだ。

ミ・カ・と・シ・ズ・は・テ・レ・パ・シ・ス・ト・で・は・な・い。

ミカにそんな能力があるはずがない。
もし彼女に送信能力があれば、私が探知できないはずはない。
もし、シズに受信能力があれば、私の強烈な送信に気が付かないわけはない。
だから彼女らは絶対テレパスではない。

ほとんどの生徒はミカとシズを信じている。絶賛の嵐だ!
イカサマ野郎に騙されているわ。
お笑いだわね。

しかし、どーんな仕掛けがあるのだろう。

授業が始まったが、今のイカサマ・ショーで皆は興奮している。
何が凄いのだ、単なる手品じゃない。
軽々しくテレパシーを見世物にしてほしくないわ。

でもどーやってるのだろう。

シズか?
ミカには絶対、テレパス能力はない。それは確実だ。
問題はシズだ。

シズは時々、フトした瞬間に違和感を感じる。
テレパシーではない。別の何かだ。
単にその外見や雰囲気から違和感を感じるだけなのか、それとも私の能力がそれを感知しているのか分からないが。
もし、何かあるとすればシズだ。


イライラする。テレパシーを見世物にされた上に、その仕掛けが分からない。
こうなれば強行手段だわ。
接触感知よ。

送信能力がない人の思考でも、接触すれば、一番いいのは頭同士を接触させれば、私はほとんどの人の思考を読み取れる。


チャイムが鳴った。皆が帰る支度を始めている。
今しかない。
今を逃したら、今日一晩、あれこれ考えなくてはいけない。

私の心を一晩独占しようなんて、10億年早いのよ。

私は立ち上がって、シズに近づいた。
今から手の込んだことはしていられない。慎重さにかけるが、今晩ずっと悩むよりましだわ。

チャンスは悪ければ2,3秒。運が良ければ10秒から20秒ってとこね。
その瞬間に全てをキャッチしなければいけない。


「あっ!痛い!」私は机に足をぶつけたフリをして、シズにもたれかかった。
「あ、イテテテ・・・うー・・・」
「大丈夫!?」シズが私を支えながら言った。
「ご、ごめん!ちょっと肩かしてね」
「ええ」
今だ!私はシズにしなだれかかり、頭同士を接触させた。

シズの記憶が雪崩れ込んで来る・・・
これじゃない。この記憶でもない・・。
・・・・・・・こ、これは・・・・・・


な、なんてことなの!シズは・・・


これは動物と交信するチャンネルよ!!



私が気が付かない筈だ。
こんな下品なテレパス能力を持つているなんて!!
ならミカもこのチャンネルを???

違う・・・そうじゃない。これは手品とは関係ないわ・・・


これだ!!
「声」!
「声」が手品のトリックだわ!!
彼女らは通常の人には感知できない音域で送受信できるんだわ!!


第十八話へ


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