ミカとシズがテレパシー実験をやると言い出した。
お笑いだ。
どんな手品かしらないけれど、安易にテレパシーなどと言ってほしくない。
ミカとシズが背中合わせに少し離れて座り、ミカにテレパシーで送る「単語」を他の生徒が見せている。
ミカはそれらしく精神統一をして見せている。ミカが「えぃ」と言って体を前に曲げる。
するとシズがその「単語」を言い当てた。
「スゲー!」「どーやったんだ」「すごいわ!」「凄いけど手品だろ」
感嘆の声が次々に上がる。
自分達がやるって言ったんだから、できるのは当然でしょう。
何がうれしいんだか・・・。
皆は、「単語」ではあきたらなくなって、問題を「文章」にしだした。
問題を出す人物も一回づつ変わった。
それらのことごとくをシズは言い当てた。
しかし、どんな仕掛けだろう。
こうやって見る限り、第三者の協力はなさそうだ。
「スゲー。本物のテレパシーだ」
「ちがうよ。仕掛けがあるんだよ。テレパシーなんかあるわけない」
「ミカ、シズ。すごいじゃない。テレパスだわ」
テレパシーなもんか。
ミカとシズはテレパシストではない。
他の懐疑派の生徒が「それはテレパシーではない」と言うのと、
私が「それはテレパシーではない」というのは意味が違う。レベルが違う。次元が違う。
私は知っているのだ。
ミ・カ・と・シ・ズ・は・テ・レ・パ・シ・ス・ト・で・は・な・い。
ミカにそんな能力があるはずがない。
もし彼女に送信能力があれば、私が探知できないはずはない。
もし、シズに受信能力があれば、私の強烈な送信に気が付かないわけはない。
だから彼女らは絶対テレパスではない。
ほとんどの生徒はミカとシズを信じている。絶賛の嵐だ!
イカサマ野郎に騙されているわ。
お笑いだわね。
しかし、どーんな仕掛けがあるのだろう。
授業が始まったが、今のイカサマ・ショーで皆は興奮している。
何が凄いのだ、単なる手品じゃない。
軽々しくテレパシーを見世物にしてほしくないわ。
でもどーやってるのだろう。
シズか?
ミカには絶対、テレパス能力はない。それは確実だ。
問題はシズだ。
シズは時々、フトした瞬間に違和感を感じる。
テレパシーではない。別の何かだ。
単にその外見や雰囲気から違和感を感じるだけなのか、それとも私の能力がそれを感知しているのか分からないが。
もし、何かあるとすればシズだ。
イライラする。テレパシーを見世物にされた上に、その仕掛けが分からない。
こうなれば強行手段だわ。
接触感知よ。
送信能力がない人の思考でも、接触すれば、一番いいのは頭同士を接触させれば、私はほとんどの人の思考を読み取れる。
チャイムが鳴った。皆が帰る支度を始めている。
今しかない。
今を逃したら、今日一晩、あれこれ考えなくてはいけない。
私の心を一晩独占しようなんて、10億年早いのよ。
私は立ち上がって、シズに近づいた。
今から手の込んだことはしていられない。慎重さにかけるが、今晩ずっと悩むよりましだわ。
チャンスは悪ければ2,3秒。運が良ければ10秒から20秒ってとこね。
その瞬間に全てをキャッチしなければいけない。
「あっ!痛い!」私は机に足をぶつけたフリをして、シズにもたれかかった。
「あ、イテテテ・・・うー・・・」
「大丈夫!?」シズが私を支えながら言った。
「ご、ごめん!ちょっと肩かしてね」
「ええ」
今だ!私はシズにしなだれかかり、頭同士を接触させた。
シズの記憶が雪崩れ込んで来る・・・
これじゃない。この記憶でもない・・。
・・・・・・・こ、これは・・・・・・
な、なんてことなの!シズは・・・
これは動物と交信するチャンネルよ!!
私が気が付かない筈だ。
こんな下品なテレパス能力を持つているなんて!!
ならミカもこのチャンネルを???
違う・・・そうじゃない。これは手品とは関係ないわ・・・
これだ!!
「声」!
「声」が手品のトリックだわ!!
彼女らは通常の人には感知できない音域で送受信できるんだわ!!
第十八話へ
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