「・・・えー。わが国では、21世紀初頭に停滞するかに見えた人口増加ですが、医療や遺伝子治療の進展により、再び爆発的な増加が始まり、現在では●●億5000万人が・・・・・」
先生が教壇で話していた。
「そして、新たな丈夫で半永久的とさえ考えられる長持ち素材の登場や、建築法の大幅な改革により、建物の上に更に構造物が建設される事が認められました」
昔は建物の上に建物がなかったらしい・・・
健介はそんな状態が想像できなかった。
授業が終わり、仲間が話しかけてきた。
「帰りに、肝試しに行こや」
「行こ行こ!!」健介はすぐに同意した。
昔、肝試しは「夜」にするのもと相場は決っていたが、現在では何時でも可能だ。
「そやな、今日は、5階層ぐらい降りてみーへんか?」
「5階層も降りんの?照明ついてへんのとちゃう?」
「暗いから面白いんやんけ」
「5階層も降りたら、人も住んでへんのんちゃうの?」
「そやな~古い建物しかないから、人もまばらや。そこに幽霊屋敷があるんや」
健介達は、3人で肝試しを決行した。
「5階層降りる」と言っても「建物内の5階」分を降りる訳ではない。
「建築物の層」を『ひとつの階』と見立てて、5階層と言っているのである。
建物はそれぞれバラバラの階、高さを持っていているが、おおよそその地域で平均的な高さの建築物をひとつの階と見立てて、「階層」と言っているのである。
「ここが幽霊屋敷や」
「めっちゃ暗いやん。懐中電灯持ってきたらよかった」
「昔、ここに住んでいた父親が狂ってしまって、家族全員の首を包丁ではねたらしい」
「ほんまかいな。オマエ、その話、今、作ったやろ」
「造ってないわ。ボケ」
「床、腐ってるんちゃうか」
「なんか地面がジメジメしてるで」
「うあ!!なんか動いた!!」
「生首や!!」
「ギャー!飛んだ!!」
「こ、こっち来るぞ!!」
「ひえ~!!!」
「逃げろ!!」
「ぎゃ~!!」
都市の迷宮化が進んだおかげで、昆虫は都市の下部で異常に進化、大量発生していた。
しかし、それでも人間が天敵なのは言うまでもない。
ある種の昆虫たちは、「生首」に擬態することで、人間の侵入者を防いでいた。
第三話「消える死体」へ
0 件のコメント:
コメントを投稿