2008年10月12日日曜日

ミカシズ・シリーズ(仮題) 第四話

3時間目の終わり間際、小テストが始まった。
先生が用紙を配る間に、生徒の誰かが言った。
「ミカとシズなら、カンニングできるんじゃないか?」
「いいな~」「ずるい~」色々と歓声が上がった。


ミカとシズには単にふたりだけの、しかも一方通行の伝達手段しか持たない。
しかも、特殊能力ではあるかもしれないが、テレパシーではない。
しかし、他の者にとってはとてつもなく無限大の可能性があるように思われているのだ。

「いいな~ミカとシズは」次々にミカとシズをうらやむ、賛美する声が上がった。

ミカとシズは戦慄した。

ミカとシズが教室の話題をさらったのだ。
きっと何かが起こる。ミカとシズは震え上がった。


その時、いつもは静かで大人びた、クラスで成績と美貌、その両方で一、二を争うレイカが言った。
「いいじゃない。エスパーの特権よ。悔しかったらあなたもミカやシズみたいにエスパーになったら」
その一声で、クラスは静かになった。



次の授業は体育だった。
授業開始そうそうミカは中森先生に体育倉庫に行って、ストップ・ウォッチを取ってくるように言われた。他の生徒は、先生がいいと言うまで校内ランニングだった。

ミカはシズと一緒に行こうとしたが、ひとりで行かされた。

ミカは体育倉庫に入ってストップ・ウォッチを探したが、見つからなかった。
「そもそも、ストップ・ウォッチって、体育倉庫に置いてあったっけ?」
ミカがそう思った時、体育倉庫の扉が開き、体育の中森先生が入ってきた。
大柄で昔柔道をやっていた先生だ。

中森先生は、後ろでに扉を閉めた。
「遅いな~ストップ・ウォッチは見つかったか?」
「今探しています」

中森先生は意地悪そうな口調で言った。
「超能力で探せよ」

ミカが振り返ると、先生はヘラヘラと笑っていた。
「超能力なら直ぐに見つかるだろ?それとも、あれはイカサマだったのか?」

ミカが答につまっていると、先生は続けた。
「わかってるんだぞ。お前は幼い頃からピアノや歌を習っている。
だから通常の人間では聞こえない振動数の声を出すことが出来る。
ある意味、特殊能力だが、テレパシーじゃない。
シズは、通常の人間では聞こえない振動数の音を聞くことができる」

ミカは驚いた。
これはミカとシズだけの秘密だ。
ピアノや歌の先生も知らない。親だって知らないのだ。
なぜ、あまり接触のない中森先生が知っているのだろう・・・。

中森先生は、ヘラヘラ笑いながら、倉庫に置いてあったバットを手に取った。

第五話「過去」へ

0 件のコメント: