ミカは暇になると、歌の練習をしていた。
それが授業中であろうと人ごみの中であろうと。
もちろん大声を出して歌ったなら、周りに迷惑がかかる。
ようするに「イメージ・トレーニング」とミカが呼んでいる声を出さない練習だ。
レッスン中に気がついたのだが、ある程度限界を超えると、声が聞こえなくなることに気がついたのだ。
発声方法は、通常より過酷だ。音はでないが通常より激しい発声方法になる。
ミカは暇があるとこの無音発声でイメージ・トレーニングした。
ミカの無音発声の「声」に気がついたのはシズだった。
シズは動物が好きな無口な性格だった。
どんな動物達もすぐにシズになついた。
家でも猫を飼っているが、学校でも飼育委員をやっていた。
「聞いたこともない声だわ。とってっも綺麗」シズがミカにそう言ったのが最初だった。
ミカは無音発声の声が聞こえるシズを不審に思ったが、やがて本当にシズには聞こえているのがわかった。
それ以後、ふたりは親友になった。
ミカは、親やレッスンの先生に「無音発声」を聞かせてみたが、聞こえないようだった。
誰も聞こえないのに「これは聞こえる人には聞こえるのよ」と言っても、信じてもらえなかった。
ミカは信じてもらうことをあきらめた。シズが分かってくれるだけでよい。そう思っていた。
テレパシーのいたずらを思いついたのは、単なるお遊びのつもりだった。
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