ミカとシズが振り返ると、中森先生が窓から校庭に飛び降りるのが見えた。
ヒッ!
ふたりは、必死で走った。
校門で振り返ると、中森先生は5メートルほどに迫っていた。
「待て!!」中森が叫んだ。
「シズ。ふたてに分かれるのよ。そして、どこでもいいから家に入って助けを求めるの」
ミカがそう言った。シズはうなづいた。
しかし、その直後、ミカの隣りで走っていたシズが消えた。
シズは中森にエリを掴まれて、引き戻されていた。
中森はそれでも走っていた。シズは中森の走る動作に合わせて振り回されていた。
次の瞬間、ミカも中森に首根っこを掴まれた。
中森は左右の手にミカとシズのエリを掴んで、ハアハアと荒い息をした。
「ちゃんと言いました」
「正直に言いました」
ミカとシズも息が上がっていたが、必死で口々にそう言った。
中森は真面目な顔をして言った。「何で逃げるんだ?」
「お、追いかけてきたから・・・」ミカが言った。
「授業中に教室を逃げ出して、学校の外にまででるとは何事だ!よし、ちゃんと最初から話せ」中森が言った。
ミカとシズは捕まれば殺されると思っていた。
殺されないまでも、ひどい仕打ちがあると思っていた。これは、どういうことだろう?
やはり人前で生徒に乱暴するのはいくらなんでも無謀だと思ったのか?
ミカとシズは教室に向かいながら、おそるおそる話だした。しかし、エリ首はつかまれたまま。
「中森先生の言うとおり、皆に言ったんです」
「何?俺が何を言った?」
とぼけているのだろうか?
あの時、「このことを話したら殺す」と中森先生は言った。つまり、「皆にテレパシー実験はイカサマだったと告白するように強制したことなどなかった。お前らが自発的にやった」ことにしろ。と暗に言っているのだろうか?
ミカは混乱したが、中森の顔色をうかがいながら続けた。
「あの実験はテレパシーではなかったと教室で言ったら、皆がそれはもっと凄いと言って騒ぎ出して、アキラ君や隣りのクラスのアイちゃんが騒ぎだして、中森先生が教室に入ってきました」
「で、何で逃げ出したんだ?」
「だから・・・中森先生が追いかけてきたから・・・」
「な、何を言っているんだ? お、俺はお前らの教室が騒がしくなったから、見に来たんだ。色々と事件が続いてるからな」
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