2008年10月15日水曜日

第十五話    ミカシズ・シリーズ

アキラがミカを追ってきていた。

ミカは廊下を必死で走るが、距離は確実に短くなっている。

今日は体育館で全校生徒が集まっている。
校舎には誰もいない。
うかつだった。ミカは自分のミスを悔やんだ。


角を曲がると、正面にバットを持った中森先生が立っていた。

ヒッ!

ミカが立ち止まると、後ろから追ってきていたアキラが猛烈な勢いで迫っていた。

ミカは大声で叫んだ。
力の限り大声で叫んだ。


しかし、なぜか声が出なかった。

大声で叫んでいるはずなのに、音として出なかった。


中森が言った。
「誰にも聞こえるもんか。お前の声は『無音発声』しかできなくなったんだよ」


そんなはずはない。
ミカは更に大声で叫んだが、音としては出なかった。

アキラが追いついた。

ミカは、廊下の隅に追い詰められた。

中森はバットの先端をコツコツと当ててにやにやと笑っていた。
アキラは獣のような目をして、口から涎を流していた。

アキラがミカに手を伸ばしてきた。
そして、ミカの首を絞め始めた。

ミカは無音発声さえも出せなくなった。
苦しい・・・。息が出来ない。

ミカはそのまま倒れこんだ。
アキラはそれでも手を離さない。
ミカに馬乗りになって、アキラは更に力を入れた。


ミカの頭上に中森が立った。
ミカを見下ろして、へらへら笑っていた。

ミカはなんとか脱出しようとしたが、アキラが上に乗っているので身動きができない。
苦しくて、もがくだけしかできない。
意識が朦朧としてきた。


頭上で、中森がバットを振り上げた。
中森はへらへら笑いをやめて、ミカの顔面に狙いを定めていた。

ヒッ!
初めてミカの口から声が漏れた。



中森は満身の力を込めて、バットをミカの顔面に振り下ろした。


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