シズは、疲れきっていた。
一体、最近の出来事はどーいうことなのだろう。
訳が分からなかった。
中森先生は、校庭を追いかけてきた時、そ知らぬふりをしたのは何故だろう。
アイやアキラが急におかしくなったのは、嫉妬だけ?
考えても分からなかった。
その時、窓のガラスがガリガリと引っ掻かれた。
シズはベッドから身を起こし、窓を開けた。
猫のミーシャが入ってきた。
ミーシャはシズの家で飼っている猫だ。
一日中家にいる時もあれば、フィに外に出て行く時もある。大抵はその日の内に帰ってくるのだが、2,3日帰って来ない時もある。
玄関や窓が開いていない時は、ミーシャは自分で勝手に窓を開けて外に出る。最初は驚いた。
窓の中央にあるフックにジャンプしてぶら下がり、自分の重みでフックを降ろす。
そして、ガラス窓を自分でスライドさせて開けるのだ。
最初は開けっ放しで出て行ったが、最近はちゃんと出た後に窓を「閉めて」行くようになった。
窓を閉めなさい。言い聞かせていたら、本当に閉めていくようになった。
利口な猫だ。
外から帰って来た後も、窓の下に用意してある濡れ雑巾で、足の裏をごしごしとすりつけてから室内に入る。
これも、帰ってきたら足を拭きないと言い聞かせ、雑巾を用意したら、そうするようになった。
ミーシャに言葉はわからないと思う。でも、何か通じるものがあるのだとシズは思っている。
動物はシズにとって、とっても大切だ。
ミカの無音発声が聞こえる能力もミーシャやその前に飼っていたペットのおかげでだと思っている。
彼、彼女らの「声」に耳を傾けていると、それらの声が聞こえるようになったのだ。
正確にはその能力を失わずにすんだ。
シズが幼い時、ペットが不思議な鳴き声を出しても、家族には聞こえない時があった。友達のほんの何人かは聞こえる子もいたけれど、成長するにつれて聞こえなくなったようだ。
毎日、ペットとじゃれあって耳を傾けていたから、人には聞こえない動物だけの声を聞く能力が失われずにすんだのだとシズは思っていた。
教室でも不意に大きな音が鳴って、ハッと辺りを見ると、他の生徒は何事もなかったように、授業を受けている時もあった。
だから、ミカに出会うまでに、シズは薄々自分の能力に気がついていた。
シズはミーシャを優しく抱き上げ、ベッドに入った。
今は眠りたい・・・。疲れた・・・。
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